(蝋燭・・ろうそく

 あれは、そう、昭和47年か48年だった・・と思う。 当時私は栃木県小山市で、家電(家庭電器)の出張修理の仕事に毎日明け暮れていた。 どんな、へんぴな処にも人が住んでいれば テレビや冷蔵庫、洗濯機ぐらいはあるから 修理の依頼が有ればどこにでも出かけていくことになる。


小山市の中央を流れている思川(おもいがわ)の上流は鹿沼市に入り、大芦川、南魔川、粟野川に分かれるが、修理の行き帰りに魚釣りをしている人を横目で観て車を走らせながら、いつか私も釣りに来よう、どうせなら、やったことの無い渓流釣りをやってみたい・・と思っていた。

その川のなかで 南魔川の、そのまた支流に荒井川という細い川があって 魚体は小さいけれど比較的魚影が濃く、渓流釣りの初心者向きということを地元の人から教えられ、釣り場の下見もかねて土曜日の昼頃、友達の大谷君とテント持参でオープンタイプの三菱ジープで出かけた・・・その夜はテントで過ごし、早朝すぐに釣り始め、昼頃に帰る予定である(私も若かったのですネ)

下見も済みテントを張り食事も終わり、夜10時頃には二人とも寝てしまった。 ランプを消すと曇っていたため真っ暗である。 7月に入って間もない頃であったから暖かい。

何時頃か良く解らないが(たぶん1時か2時頃)ふと目を覚ますと20センチほどの長く太い蝋燭が、ローソク点てに刺さってテントの真中で燃えていた。 大谷君が気を利かせて持ってきたんだな・・と思ったから、さして気にも止めずオシッコをして、また寝てしまった。 大谷君は反対側を向いてよく寝ている。

次に目が覚めたのは3時50分である(時計を見たから)・・あいかわらず蝋燭が燃えている。

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