(街角の名役者)

なんのコッチャ?・・でしょうが、そーなんです 紙芝居のオジサン

 オジサンの名前はセジマさん。近所の駄菓子屋さんでした。奥さんに店を任せ自分は自転車で紙芝居をやっていたのです。子供のボクが見ても・・ハンチング帽をかぶり、背が高くて細面の鼻筋がとおったチョットいい男に見えました。 家での奥さんとの会話はボクの知っている限り喧嘩のような口ぶりしか思い出せません・・し、普段は無口なオジサンでした。

しかし、紙芝居の弁士(と、いうのかな?)になると全く違った。当時の紙芝居は・・マンガにメロドラマ(と、いうのかな?)それと冒険活劇・・の三本立て(?)で、その弁士ぶりは子供のボクでも・・上手いな〜・・と思わせた。 どうしてそれが解るかというと、違う街に行ったとき、そこでやっている紙芝居に遭遇すると水飴を買わずに(ただ観)横から覗いて観たことも多々あって、セジマのオジサンと比べてヘタクソ・・と感じたから・・。

セジマ紙芝居はメロドラマなど女性のセリフはそのとおりの声で語り感情たっぷりに演じたし、冒険活劇は子供たちの胸を躍らせた。

ときには、芝居途中で雨、風が強くなった場合 セリフを はしょって早く切り上げることも有ったが話の筋はキッチリ通した。 観たいのだけれど水飴を買うお金が無い子供が遠くでモジモジしているときは、いつも中断して招き入れた。 ボクはオジサンが、どんなときでも子供たちの様子を確かめながら一生懸命に演じていた顔を忘れない。

昨今、たまに活動写真や紙芝居のことがテレビで紹介されることも見受けるけれど、その弁士の話方と同じ・・と思ってもらっては困る。 一枚の紙に描かれた絵だけを元に、当時の子供たちの心を深く揺り動かせたセジマ紙芝居はオジサンだけが演じることの出来た日本一の紙芝居であった。

mvm masa


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